• BCP対策(事業継続計画)

BCP対策とは?ポイントや策定の進め方を徹底解説

BCP対策とは?ポイントや策定の進め方を徹底解説

BCP(事業継続計画)とは

BCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)は、災害や緊急事態が発生した際に、企業や組織が事業を継続させるための計画です。BCPは、さまざまなリスクや災害に対処するための戦略や手順を含んでいます。これには、自然災害(地震、水害、台風など)、感染症の流行、人為的な災害(テロ攻撃、サイバー攻撃など)などが含まれます。BCPは、企業にとって重要な経営戦略のひとつです。BCPを策定・運用することで、緊急事態が発生した際にも事業を継続し、企業の存続と発展を図ることができます。

BCPの目的

BCPの目的は、緊急事態が発生した際に、被害を最小限に抑え、事業を継続または早期に復旧させることにあります。

具体的には、以下の7つの目的を達成することが求められます。

1.リスクの軽減

BCPでは、以下の三つの方法でリスクに対処します。

  • リスクの回避:リスクの発生そのものを防ぐ方法です。
  • リスクの低減:リスク発生時の被害を軽減する方法です。
  • リスクの分散:リスクの影響範囲を限定する方法です。

自然災害のリスクに対するBCPの具体的な対策例

  • 事業所の立地:地震や洪水などの災害リスクの低い場所を選ぶ。
  • 耐震性の強化:事業所の耐震性を高め、災害時の被害を軽減する。
  • 自家発電設備:停電時でも事業を継続できるように自家発電設備を備える。
  • BCP臨時対応拠点:災害時に他の支店で営業を代行できる拠点を確保する。
  • データの分散保管:データセンターだけでなく、複数の拠点にデータを分散保管する。
  • 保険加入:災害時の資金ショートに備えて保険に加入する。

2.従業員の安全確保

安全な職場環境の整備

  • 耐震性の高いオフィスビルへの入居
  • 地震対策を考慮したオフィスレイアウト
  • 転倒防止対策を施したオフィス家具

これらの施策は、災害発生時のリスクを最小限に抑え、従業員に安全な職場を提供します。

BCP教育と訓練

  • 定期的なBCP教育の実施
  • 避難訓練の実施

これらの訓練を通して、従業員はBCPの知識を習得し、緊急時の行動を身につけます。

安否確認

  • 緊急時の安否確認システムの導入
  • 家族への連絡体制の構築

迅速な安否確認は、従業員の状況把握と早期の支援に繋げ、不安を軽減します。

これらの取り組みは、単なる安全対策にとどまらず、従業員の安心感と帰属意識を高め、企業への信頼を築きます。

3.生産性の確保

BCP対策において、生産性の確保は企業存続の鍵を握る重要な要素です。

供給責任を多角的に確保

複数のサプライヤーと連携し、原材料や部品の調達ルートを多様化することで、供給網の脆弱性を克服します。リスク分散と安定供給体制の構築により、不測の事態による供給停止リスクを最小化し、生産活動を継続します。

代替ワークスペースの整備

オフィス機能を代替できるワークスペースを事前に準備することで、災害やパンデミック発生時も業務継続を可能にします。テレワークやリモートワークなど、状況に応じた柔軟な働き方を導入し、従業員の安全と生産性を両立します。

サプライヤーや関係業者との密な連携

サプライヤーとの密なコミュニケーションと連携強化は、BCP対策において不可欠です。BCP対策は企業単独で取り組むものではありません。顧客、パートナー、行政など、関係業者との密な連携体制を構築し、情報共有や合同訓練の実施、相互支援を通じて、より強固なBCP体制を構築できます。

4.迅速な復旧

BCPでは、災害発生時に事業への影響を最小限に抑え、迅速に平常業務に戻れる体制を構築することが求められます。

影響度分析

BCP策定前に影響度分析を実施することで、災害が発生した場合の事業への影響を事前に把握することができます。影響度分析に基づき、優先的に復旧すべき業務を特定することができます。

明確な手順と役割分担

迅速な復旧を実現するためには、BCP対応手順を明確化し、関係者全員が役割分担を理解しておくことが重要です。誰が、いつ、どのような行動を取るべきかを事前に定めておくことで、混乱を最小限に抑え、迅速な対応が可能になります。

災害に強いITシステムとデータ保護

クラウドサービスや仮想化技術などを活用した、災害に強いITシステムを構築することで、停電やデータ損失などのリスクを最小限に抑えることができます。また、データのバックアップを定期的に実施することで、万が一データ損失が発生した場合でも迅速に復旧することができます。

訓練と教育

BCP訓練と教育を実施することで、BCP担当者だけでなく、全従業員がBCPの重要性を理解し、実践的な対応力を高めることができます。机上の訓練だけでなく、実際の災害を想定したシナリオ訓練を行うことで、より効果的な訓練となります。

サプライチェーンとの連携

サプライチェーンと事前に連携し、災害発生時の対応を協議しておくことで、復旧作業を加速させることができます。サプライヤーからの情報収集や代替供給先の確保などを事前に検討しておくことが重要です。

5.顧客や取引先との信頼

企業はBCPに基づいて迅速かつ適切な対応をすることで、顧客や取引先に安心感を与え、信頼関係を維持することができます。

災害発生時の迅速な対応

  • 災害発生時に、迅速かつ適切な対応をすることで、顧客や取引先から信頼を得ることができます。
  • 顧客や取引先への情報提供を迅速に行うことで、不安を軽減することができます。

事業継続へのコミットメント

  • BCPを策定・運用することで、事業継続への強い意志を示すことができます。
  • 顧客や取引先に対して、安定した商品やサービス供給を継続する姿勢を示すことができます。

リスクへの備え

  • BCPを策定することで、様々なリスクへの備えをしていることを示すことができます。
  • 顧客や取引先に対して、安心感を与えることができます。

6.採用ブランディング

企業がBCPを積極的に推進していることをアピールすることは、優秀な人材の採用に大きく貢献するだけでなく、企業イメージの向上にもつながります。

BCP採用ブランディングの具体的な取り組み

  • Webサイトや採用情報への掲載:BCP対策に関する取り組みを、企業のWebサイトや採用情報に掲載することで、求職者に積極的にアピールします。
  • 採用イベントでの紹介:採用イベントでBCP対策に関する取り組みを紹介することで、求職者に企業の危機管理意識をアピールします。
  • 社員インタビュー:BCP対策に携わる社員へのインタビュー記事を掲載することで、企業の取り組みをより具体的に伝えることができます。
  • SNSでの情報発信:BCP対策に関する情報をSNSで発信することで、企業の取り組みを広く知ってもらうことができます。

7.法的要因の遵守

企業にとってBCP(事業継続計画)の策定は、法的側面からも重要な課題となっています。

介護施設・事業所におけるBCP策定の義務化

2024年4月からは、介護施設・事業所におけるBCP策定が義務化されました。これは、高齢者や障がい者など、自然災害や感染症などに脆弱な利用者を保護し、また職員を守り、事業を継続する体制を整備することを目的としたものです。

一般企業に対するBCP策定の法的義務はない

一般企業に対してはBCP策定を義務付ける法律はまだありません。

中小企業強靭化法は、BCPの実施に積極的に取り組む中小企業を支援するために、税制優遇、金融支援、補助金の加点などの認定制度や支援策を提供する行政の枠組みです。

また、平成27年2月1日施行の「大阪市防災・減災条例」では、災害時に一斉帰宅による混乱や事故を防ぐため、企業に対して従業員の事業所内待機とそのための必要な備蓄を努力義務としています。

大阪市防災・減災条例(第5章 第25条 5)

「事業者は、災害が発生したときは、従業員等が一斉に帰宅することを抑制するため、その所有し、又は管理する事業所その他の施設の安全性及び周辺の状況を確認し、従業員等に対する当該施設内での待機の指示その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。」

大阪府は、YouTubeを通じて次の動画を公開し、大規模な災害が発生した場合、企業に対して一斉帰宅を抑制する啓発活動を行っています。同時に、事前の対応を促すため、企業に対して適切な備えを行うよう要請しています。

法的リスク

BCP策定は義務ではないものの、もし大規模災害が発生し、事業停止や従業員の被害が発生した場合、法務やコンプライアンス面でリスクが高くなります。企業のリスクマネジメントの不足として、訴訟に発展する可能性も否定できません。

BCPは、災害やパンデミックなどの緊急事態に直面しても、事業を継続し、社会貢献を果たすための重要な取り組みです。BCP策定は決して義務ではありませんが、企業存続と社会への責任を果たすために、積極的に取り組むことが重要です。

オフィス移転におけるBCP対策の重要ポイント

1.物件選び

オフィス移転は、企業にとって大きな決断です。BCPの観点から、移転先の物件を選ぶ際には、以下の3つのポイントを必ず考慮しましょう。

耐震基準

1981年6月以前に建築された建物は、現行の耐震基準を満たしていない可能性があります。新耐震基準(1981年6月以降)またはそれ以降の改正耐震基準を満たす物件を選びましょう。

耐震診断の結果も確認し、建物の安全性を客観的に判断することが重要です。

ハザードマップ

地震、洪水、津波などの自然災害リスクを把握するために、国土交通省が公開するハザードマップを確認しましょう。

浸水想定区域や土砂災害警戒区域などのリスクエリアを避けた物件を選びましょう。

地震ハザードカルテ

国立研究開発法人防災科学技術研究所が公開している地震ハザードカルテは、各地点の地震ハザード情報をまとめたWEBサイトです。このサイトでは、任意の場所を検索することで、その場所に関する地震危険度や地盤のゆれやすさなどの詳細な情報を入手できます。

2.オフィスレイアウトとオフィス家具の転倒防止対策

BCP対策を意識したオフィスレイアウトは、安全で機能的なオフィス環境を実現するだけでなく、災害発生時にも事業継続を可能にし、従業員の安全を守ることができます。

オフィスレイアウト

  • 避難経路を確保したレイアウトにする
  • 背の高いオフィス家具はデスク周辺に配置しない
  • 間仕切りとしてキャビネットなどのオフィス家具を使わない

オフィス家具の転倒防止対策

オフィス家具の転倒防止対策には、以下の方法があります。地震対策として、これらの方法を組み合わせて使用し、転倒リスクを最小限に抑えることが重要です。

  • 上下連結
  • 横連結
  • 背面連結
  • 壁固定
  • 床固定
  • 頭ツナギ

BCP策定の進め方

1.事業への影響を徹底分析

まずは、自社の事業にどのようなリスクが潜んでいるのか、そして影響度を明確に把握することが重要です。大阪商工会議所のBCP策定支援を活用すれば、専門家のサポートを受けながら、効率的に事業影響度分析を行うことができます。

2.具体的な計画で事業継続を実現

リスクを把握したら、具体的なBCP策定に取り組みます。BCP策定には専門知識が必要ですが、大阪商工会議所の支援を受ければ、スムーズに策定を進めることができます。

(参考サイト)

大阪商工会議所、BCP策定サポート

※Aコース(2日)支援コースは無料です。専門のコンサルタントによるアドバイスのもと、基本的なBCPの策定を行うことができます。

3.「事業継続力強化計画」認定制度の活用

経済産業省が行う「事業継続力強化計画」への申請と認定を受けることで、税制優遇、金融支援、補助金の加点などの支援策が得られます。

また、認定を受けることで企業は認定ロゴマークの使用が許可され、これをWEBサイトや名刺などに掲載することで、企業の信頼性向上が期待され、企業イメージの向上につながります。

「事業継続力強化計画」の申請は、まだ事業継続計画(BCP)を策定していない段階でも可能です。この制度は、BCPの取り組みを認定するものであり、進行中の取り組みも評価対象となります。

(参考サイト)

経済産業省 中小企業庁、事業継続力強化計画